【原価率と売上】飲食店運営の経費を把握して、支出を抑えて利益率を増やす!

飲食店向け情報

飲食店にとって大切な売上をより多く残していくためにも、原価率の状況把握や無駄な支出を抑えて多くの利益を残すことが重要です。本記事では、飲食店の原価だけではなく業界値、FLコスト、原価率や人件費を抑える方法などをご紹介します。

飲食店の原価とは

原価とは商品を作るのに必要な費用である売上原価を指し、飲食店の場合では料理を提供するための食材費にあたります。そのため、飲食店の原価率は食材比率やフードコストなどと呼ばれます。

そもそも飲食店における「原価」とは

飲食店における原価とは、冒頭でもふれた通り食材費です。
おそば屋さんであれば「そば粉・小麦粉・ネギ・つゆの材料」、牛丼屋さんであれば「牛肉・玉葱・お米・各種調味料」といった食材です。
販売価格に占める原価の割合は原価率と呼ばれ、1,000円の定食の材料費が500円の場合、原価率は50%となります。
原価率に関して詳しく理解しておくと原価や原価率を意識でき、適切な方法でコストカットすると不要なコスト・支出を避けられます。すなわち、より多くの利益を残せて、経営を安定に近づけることが可能なのです。

飲食店にとっての原価とは?

飲食店の業態によって原価率は異なる

原価が料理の品質やターゲットで異なること(高級店と大衆店など)はパッと理解できますが、実は原価率も飲食店の業態によって異なることは意外と見落とされがちです。

原価率の計算方法

原価率(%)=食材費÷売上高

先ほど例に挙げた1,000円定食の場合は次のような計算式になります。
このように簡単に計算できるので、今からでもメニューの原価率を把握することは十分可能です。

原価率50%=食材費500円÷売上高1,000円

歩留まり

原価について考える場合、歩留まりも意識しましょう。
歩留まりとは買ってきた時の食材状況を100%とした場合、調理時に何%使用できるかということです。

食材別の歩留まり表

歩留まり例

  • 1,000gのキャベツを調理したが、芯を捨てたら900gになったので歩留まりは90%。
  • 魚を切り身にしたら全体の40%(歩留まり率)しか使えなかった。もったいないので、お味噌汁に頭と尻尾以外入れてあら汁にすることで30%(歩留まり率)を使えたので、魚の歩留まり率は70%。

歩留まりは、このように数値で表現することも可能です。
ではなぜ、歩留まり率を意識する必要があるのかという点に辿りつくと思いますが、食材購入時のグラムや数量で調理マニュアルを作成した場合、原価や在庫にズレが生じるからです。

たとえば、先ほどの1,000gのキャベツを例に考えてみると、仮に1,000gのキャベツが200円だとした場合、付け合わせに20gをした場合50食分(1食あたり4円)の付け合わせを作れます。
しかし、歩留まり率で考えた場合、実際に使えるキャベツの量は900gなので45食分(1食あたり4.44円)しか付け合わせは作れません。1食あたりたった0.44円のズレですが、何百、何千食と販売されます。未然に防ぐため、歩留まりについてしっかりと考えておきましょう。

食材ロス

食材ロスとは、本来利用できたり販売可能なのに捨てられてしまう食材を言います。
品質に問題はないが、切り口の見栄えが悪いのでお客様に提供できないフルーツ。見栄えをきれいに整えるためにカットしたケーキの切れ端、過剰に仕込んだ在庫が賞味期限を迎えたなどの理由で廃棄してしまうものです。オーバーポーションやオーダーテイクミスによる不要な調理なども該当します。
原価や売上げに関しても食材ロスは重要な問題ですが、SDGsの観点からいっても食材ロスは最小限にする必要があります。

店内の商品在庫を確認する

飲食店の業種別平均原価率

飲食店によって原価率が異なる点は先ほど触れましたが、具体的にどのような原価率になっているのでしょうか。2022年4月30日に公開された帝国データバンク「主要外食 100 社」価格改定動向調査」を参考に各業種の原価率をご紹介します。

各業種の原価率

  • 居酒屋の原価率は35.9%
  • カフェ・喫茶店の原価率は36.9%
  • そば・うどん店の原価率は36.9%
  • レストランの原価率は39.6%
  • 大衆食堂の原価率は44.4%

引用:帝国データバンク「主要外食100社」価格改定動向調査」

上記資料にも記載されていますが、さまざまな外的要因により輸入食材の原価が大幅に上がっています。そのため、上記業態の原価率も昨年比で1.7pt~4.2ptほどの上昇幅が見られています。
一般的に言われている飲食業の平均的な原価率30%前後という平均的な数値を保つことが、これまでよりも難しくなりました。

これまでは原価率の高いフードに対して、基本的には原価率が低いドリンクメニューの出数を多くすることで、全体の原価率を下げるアプローチが一般的でした。しかし、輸入物のドリンク(外国産のビールやコーヒーなど)は高くなっていることもあり、一概にドリンクで原価率を下げるというアプローチができなくなっています。
そのため高騰した原価率の調整以外にも、セルフオーダーシステムやPOSレジなどを活用して全体の支出調整が必要となります。

FLコストについても理解が必要

FLコストはF(Food=食材費)、L(Labor=人件費)の頭文字を取ったもので、これら2つが飲食店経営の大部分を占める経費といわれています。飲食店では単に食材のみの原価率を考えるだけでなく、食材以外に発生するコストも考慮する必要があります。では、FLコストについて解説していきましょう。

原価と人件費を合わせたコスト

飲食店を経営するにあたって非常に重要なFLコストを理解することで、適切な経費の割合を理解しやすくなります。
先ほども記した通り、FLコストとは食材費と人件費を合わせた飲食店の大きなコストで、60%以下が適正値とされています。先ほど食材(お料理)の原価率が平均して30%前後と紹介しましたが、同様に人件費も30%前後が目安です。

一方でFLコストを55%以下に抑えると良好とされているため、比率55%以下を目標に経営していく必要があります。55%以下になっていれば、そのほかの家賃や消耗品、広告料などを差し引いたとしてもより多くの利益が期待できるのです。

FLコストは次のように求められます。
食材費が150万円、人件費が150万円、売上高が500万円の場合

FLコスト比率=(食材費+人件費)÷売上高×100%
FLコスト比率60%=(150万円+150万円)÷500万円×100%

ただ、都市部や繁盛エリアなどの家賃が高い場合や備品のサービスを頻繁に行っているお店は、基準よりFL比率を下げた方がいいでしょう。
また、デリバリーやテイクアウトをメインとしている場合は、システムを利用する際に高い手数料を払うことになる場合があります。その場合もまた、FLコスト比率を下げたり、デリバリー単価に料金値上げたりしないと、どれだけ料理を作っても利益が無くなることもあります。

メニューごとにメリハリをつける

FLコストを意識する場合、メニューにメリハリをつけるのもポイントです。
すべてのメニューのFLコストを統一するとどの商品が出ても安定したパーセントで売上げを確保できますが、看板メニュー(オススメやお店の売りとなるメニュー)を作りにくくなります。
原価率の高い商品に原価率の低い商品をセットとして抱き合わせることで、原価率の調整や残せる利益の調整を行い、お客様のニーズを満たしながら調整することが必要です。

伝わるメニューの作り方を知りたい方はこちら

原価率を抑える方法

原価率を抑える方法

調理マニュアルでオーバーポーションを解消

オーバーポーションとは、簡単に言えば盛り付けし過ぎの状態です。
150gのライスを180g盛ってしまったり、20gのソースを30gかけてしまったりするような行為を言います。オーバーポーションを行ってしまうと、原価が上がってしまい、積もり積もって結果的にFLコスト率を悪化させる要因になります。
過剰な盛り付けを解消するには調理マニュアルを用意し、しっかりと守ってもらうことが重要です。調理マニュアルを用意することで適切な盛り付け量が決まるので、オーバーポーションを回避できます。

ロスに厳しく、ロスを減らす

先述しましたが、過剰な作り置きによる賞味期限を迎えたロスや食材の見栄えの問題で提供できないロス、調理技術が乏しいためお肉に過剰なトリミングをしたことによるロスなど、多くのカタチがあります。
ロスはただ売れるものを捨てているというわけではなく、お金そのものを捨てているのと同じです。
コントロールできる部分は可能な限りコントロールしましょう。

適切な在庫管理へ

キッチンの野菜の在庫を確認する女性

先ほどの食材ロスと共通しますが、適切な在庫管理を行うことも重要です。
食材ロスを無くすには過剰な在庫を持たないことも求められます。
少なすぎる在庫は機会損失につながるのでマイナスと言えますが、過剰に在庫を持つことも食材には期限があるためオススメしません。
とくに生ものを扱う業種の場合は、よりシビアな在庫管理を行うようにしましょう。

メニューを見直す

メニューを見直して歩留まりを改善しましょう

過剰なサービスや量の多いメニュー、回転率の悪いメニューなどを洗い出すため、メニューの見直しは定期的に行い、早めに改善すべきです。
そうすることで、これまで歩留まりの悪かった食材を別の料理に活用できることに気づき、歩留まり率70%のものであれば90%程度まで引き上げることができます。食材ロスやオーバーポーション、過剰在庫の解消などにつながることもあります。

価格を見直す

販売価格を上げることで、食材費が同じでも原価率を下げることが可能です。
いきなり価格を上げてしまうと客離れのリスクがあるため、原材料費の高騰などきちんとした理由があるタイミングで行う必要があります。都合よく価格改定のタイミングがない場合は、原価率の低い商品と組み合わせて原価率と利益の調整を行うことも一つの手段です。

人件費を抑える方法

原価率の調整で店舗の売上げを理想の値まで引き上げられなかった場合、人件費やオペレーションの改善に着手しなければなりません。
しかし、安易に人数を減らすと「スタッフのモチベーション低下」「人数が減ることによる負担増加」などから、サービス低下につながるリスクがあります。

必要な人数で働いていたところの労働人数を減らすだけではなく、お客様が自分でタブレット注文できる環境を作ったり、テーブル案内を減らしたりするようなオペレーションからの改善が必要になります。

人件費を抑えて、オペレーションを効率化するiPadセルフオーダー

利益率の高い商品を売る

FLコスト率を下げるのに有効なのは、利益率の高い商品を売ることが重要です。
ここでは利益率の高い商品を売る方法について有効な方法を紹介します。

メニューの商品記載方法・場所

メニューの商品記載方法や場所を工夫することで利益率の高い商品を販売できます。
たとえば、人気ランキングへの記載やセット販売、シズル感のある動画で意欲をくすぐる、五感に訴えるキャッチコピーを作るなどがあります。

キャッチコピーの作り方の資料はこちら

声かけで、注文内容をコントロール

声かけは定番中の定番ですが、居酒屋であってもカフェであっても蕎麦屋であっても業種問わずにオススメのメニューを教えてくれます。クロスセルを活用した、居酒屋のドリンク注文の声掛け、ファストフード店のポテトの追加注文なども該当します。

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まとめ   

今回は原価率の計算方法やFLコストについてお伝えしました。
ポイントとしては、原価率を正確に把握し、食材ロスを無くし、最適な人件費で健全なFLコスト率を達成すること。まずは、各メニューの原価率を計算して、各料理の出数からお店の実際の原価率を計算しましょう。

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